日本語における一人称代名詞には「わたし」・「わたくし」以外に、「僕」、「おれ」、「わし」、
「うち」など数多くの表現がある。さらに、日常会話において、日本語母語話者は自分と相手との関 係、つまり、親疎関係、社会的な立場などに応じて、一人称の使い分けをしている。また、話し手と 聞き手の性別、年齢によって、一人称の選択にも多様さがある。
日本語において、「男性語」と「女性語」という分類がある。一人称においてもこのような使い分 けがある。「ぼく」、「おれ」は「男性語」の一人称であり、「あたし」、「うち」は「女性語」の 一人称として、主に女性に使われている。金水(2000)は「「私的な話し言葉」において性差を最も よく表すのは第一人称—中略—である。」と説いている。平松(2010)も、「一人称の使用において男 女差が出ている」と指摘している。また、一人称の使用実態から、男女共に自分をどう見せたいか、 相手にどう思われたいかなどが分析できる。
一人称代名詞の表現方法が多くあるが、村上(1996)は、日本人の日本語の文章および会話では、 一人称の主語が、多く省略されるということを述べている。また、荒木(2003)は「日本語では目上 の人やあまり親しくない人物には、あえて人称代名詞の使用を避けている傾向にあるといえる」と説 明している。更に、佐藤(2007)も「日本の家庭では家族が自分や相手を呼ぶ場合、年下の者は年上 の人に向かって人称代名詞を使わず、その反対に、年上の人が年下の者に話しかける際には親族用語 を用いないという原則がある」と述べている。この現象は、鈴木(1973)が「家庭内だけでなく、家 族外でも用いられることがある」としている。
本稿では、先行研究を踏まえ、日本語母語話者を対象に、一人称の使用実態とイメージに関するア ンケート調査及びインタービューを実施する。そしてその結果を分析し、一人称の使用実態から現在 日本人の考え方を考察する。
2. 先行研究と本研究の立場
2.1 先行研究
日常会話における一人称の使用状況については、近年いくつかの文献により、量的調査が実施され ている。ここでは、先行研究の記述を取り上げ、以下のようにまとめる。
まず、平松(2010)は、日本人男女(19 歳~24 歳)の一人称と家族呼称についての使用方法とイ メージを知るため、アンケート調査を行っている。その結果から、一つは前述のように、一人称にお いても家族呼称においても、使用において男女差が出ていること、もう一つは、各一人称に対し抱い ているイメージは男女によって違いがあるということを明らかにした。また、金水(2000)は一人称 を「男性語」と「女性語」で分けて考察していた。その結果、若い男性は、年齢と場面によって、「私 的」の「ぼく・おれ」と「公的」の「わたし・わたくし」を使い分ける傾向にある。しかしながら、 女性語の一人称については、「わたし」は公的、「あたし」は私的という性格を持つが、その差はあ まり大きくない。長崎(2007)も男性語の「僕」について研究している。更に、小嶋(2008)は「日 本人が話し相手によっても、使用される一人称には、性差や学年に伴う相違と所属集団独自の使用形 態が存在することが確認された」と述べている。また、大和田・下斗米(2004)では、自分を指し示 す一人称への意味づけが、若者の社会的アイデンティティ確立のために一定の機能を持ちうるもので あるかどうかを検討した。藤原(2013)と三輪(2005)も一人称について相手の年齢、性別、身分な どによって違う訳し方を選ばなければならないと説いている。つまり、一人称は日本人の文化が大き く反映されており、また性差が大きく出るということがわかる。 从人称代词考察日本人的思维方式以第一人称为中心(2):http://www.chuibin.com/riyu/lunwen_205329.html